「葡萄酒」 | |
おぉ なんと真紅の薔薇のように紅い葡萄酒なのだ まるで悪魔の祭壇に生贄として捧げる 聖者の淨い血のようだ 何かを封印しているかのように 堅く詰め込まれたコルク栓を引き抜き トクリ トクリ なんとも心地好い音を響かせながら 冷たい氷のような硝子の器に 真っ紅な葡萄酒を注いでゆく |
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壱杯呑めば 余りの旨さに心奪われ踊り出す・・・ |
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「さぁ 最後の一滴残さず全て呑み乾すがいい・・・」 嘲笑うかのように 鈍色に光る葡萄酒の瓶は 口から紅い汁を垂らしながら ワタシにそう呟いた |
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今 ワタシの躰の中で何かが産まれ うにょうにょと暴れ蠢いている 深く浸透していった葡萄酒が 欲望という名の無数の蟲となり 血 肉 はらわた そして脳味噌までも喰いちぎってゆくのだ おぉ なんといい気分なのだ これは快楽というべきなのか? 蟲が躰を喰い散らかすごとに満ち溢れるような 絶頂の快感が 頭から足の先まで駆け巡ってゆく・・・ さぁ もっと喰らえ! もっともっと喰らうのだ! この醜い目も耳も鼻も残さず喰らえ! 骨の髄まで喰いちぎれ! そしてその鋭い狂った牙で 萎びた皮膚を引き裂き 紅々と燃え盛る太陽目がけ飛び去り 躰を焦がせばいい・・・ 何も悲しむことはない 滅びゆく美しさの中で ワタシは命を代償に 永遠の快楽を手に入れたのだから・・・ 恐れることはない・・・ これがワタシの本望だから・・・ 悪魔がくれた永遠の快楽だから・・・ 欲望の果ての姿だから・・・ |
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さぁ 神よ! この狂ったワタシの彷徨う魂を 地獄の底へ叩き落とすがいい! 今のワタシは全ての痛みの悲しみも 快感に感じることができるのだから・・・ ---- そして今日もまた 誰かが永遠の快楽を求め 禁断の封を開ける音が 街の片隅で響く ---- |
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1993.?.? |
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