「 蜃 気 楼 」


おお 禁断の蠍よ

自慢げに振るう 其方の毒針で

我が神経を麻痺させておくれ





見渡す限り 延々続く広大な砂漠

灼熱地獄 カラカラに渇いた心

じわり じわり 容赦なく照る

あの忌々しき太陽に乾
(ほ)され

正気など 既に枯れ果ててしもうた


ゆらり ゆらり 朧気
(おぼろげ)に揺れる水源郷

心を鎖せ 心を鎖せ

其れは渇望の果て 己の心が映す蜃気楼

一滴の水を乞うが為 自我心を失えば

(たちま)ち足元は崩れ 欲望の流砂に呑まれようぞ!

 

雑音の砂嵐 昼夜の区切り無き都会砂漠

個々の胸に 重き十字架を背負い

(うつむ)いたまま無言で擦れ違う 放浪者の群衆

2002.08.26




PREV Poem NEXT