「 飛 躍 」



蝋で固めた鳥の羽根 偽りの堕天使

断崖絶壁の上に立ち 空を仰ぐ


理想と現実に打ちのめされた希望を胸に抱き

谷間から吹き上げる上昇気流目掛け 飛び降りた


幼年期 見上げた空には夢や憧れが 

白き真綿のように ふわり ふわり

手を伸ばせば届きそうな場所で

穏やかな時間に吹かれ 浮いていた




蝋で固めた鳥の羽根 偽りの堕天使

創りモノの翼で 空を舞う


理想と現実に打ちのめされた希望を胸に抱き

暗雲の切れ間に零れる一筋の後光目指し 羽ばたいた


早春期 理想を胸に宿した少年は

時間の加速度が増すに連れ ふわり ふわり

夢や憧れどもが浮かぶ空の高さと 

己の背に翼が無い現実に失望す




蝋で固めた鳥の羽根 偽りの堕天使

融け始めた翼で 空
(くう)を切る


理想と現実に打ちのめされた希望を胸に抱き

眩き太陽と雲海広がる憧れの地を夢見し 落下する


青年期 太陽熱に犯された少年の

翼はいつしか融け始め ふわり ふわり

希望の羽根を撒き散らしながら

冷たき地面へと叩きつけられた




蝋で固めた鳥の羽根 偽りの堕天使

暗き絶望の淵で 空を仰ぐ


理想と現実に打ちのめされ 壊れた翼を胸に抱き

淡き夢や憧れどもの儚さに落胆し 空を呪う
 


 
2002.07.29




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