「奈 落」


安く見積り過ぎた 幸福の代償


それはアナタの裏切りでした



名も知れぬ小さな草花が咲き 

穏やかな日差しと 優しい風が吹く場所 

それは二人が目指した 極ありふれた幸福の丘
・・・



アナタとの幸福を信じ 登り続けた坂の途中

突然 アナタはサヨナラの言葉と共に 

ワタシを絶望の谷へと突き堕としました


奈落の底へと転がり堕ちる刹那 

ワタシの目に映ったのは

知らぬ誰かの手を しっかりと握り締めた

アナタの姿でした


失意の引力に魂を委ね

ワタシの躰は加速度を増し

深き奈落の底へと 転がり堕ちてゆく

アナタとの美しき想ひ出と

ワタシの心を粉々に砕きながら・・・


 



光差し込まぬ 奈落の底 

盲目のまま 手探りで

粉々に砕け散った破片を拾い

鋭く尖った部分を突きたて 我が胸深く突き刺した


精神は既に麻痺し 痛みを感じることもなく

ただ ドクリ ドクリ 脈打ちながら流れ出す

生温い血の温もりだけを感じていた


心地よい寒気と 薄れゆく意識の中

ドクリ ドクリ 流れ出す 

唯一の我が温もりに包まれて

アナタに抱かれる夢を見ました



どこにでもありふれた日常を アナタと二人で過ごす夢


ただ 純粋にアナタのそばに居たかった・・・



誰もが手を伸ばせば届く場所で アナタと二人で暮らす夢


ただ 純粋にアナタのそばに居たかった・・・




安く見積もり過ぎた 幸福の代償


それはアナタの裏切りでした


2001.06.11

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