「藻 屑(もくず)


流れ 流れて 流されて 

思えば遠くへ来たものだ


大きな時間
(とき)の潮に揉まれ 

必至で泳ぎ続ける一匹の魚


痛々しく剥がれ落ちたウロコ 

ボロボロに傷ついた鋭い背びれ


時代の流れに逆流しようと 

もがけばもがく程

社会の荒波に揉みくちゃにされ 

モラルの海流に 流されてしまう哀れな魚



 


流れ 流れて 流されて 

思えば遠くへ来たものだ



自己の存在理由もわからずに

混沌とした世界で 彷徨い続ける一匹の魚



汚染された世界で 白く濁った眼
(まなこ)

息苦しさにもがき苦しみ 飛び跳ねる躰


このまま時代
(とき)の潮に流されて

いつか海の藻屑
(もくず)と化すのなら

深き海の底に沈み込み

光届かぬ世界で 静かに揺られて暮らしたい


だが我が腹にある 集団条理の浮き袋が

沈み込む我が心と躰を 潮の流れへ引き戻す


流れ 流れて 流されて

無力な我が身を 潮の流れに委ねながら


海の藻屑
(もくず)と化す日まで 漂い続ける一匹の魚


流れ 流れて 流されて・・・





2001.08.08




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